こんにちは!ひろ@です。
昨今、日系企業の海外進出などもどんどんと進み、20代でも海外出張される方・駐在される方も増えてきています。
若手社員
若手社員
と思われる方も多いと思います。
筆者はキャリアの中で、海外営業や事業開発の仕事を通じて、常に海外の企業と関わる機会がありました。
また、筆者の身の回りにもグローバルな仕事に従事している友人などがたくさんおり、数多くのケースを見聞きしてきました。
その中で、本社の営業や駐在員が必死にやっているように見えても、1年経っても2年経っても同じことを繰り返しているのでは?と感じることも多いです。
これはなぜ起こってしまうのでしょうか?
それは「パートナーシップの築き方」に問題があると考えています。
本稿は、筆者が「新規事業開発」の業務であらためて感じた「日系企業の海外展開はなぜ思ったように進まないのか?」について、筆者の所見を述べてまいります。
目次
【失敗の原因】なぜ日系企業の海外展開は進まないのか?
海外展開の失敗の原因
結論から言うと、この議題に対する筆者の答えはこれです。
「日系企業は、現地化(ローカリゼーション)を怠っている。もしくはする気がない。」
マレーシアでも身の回りの話を聞いていると、びっくりするくらいこんな話が多いのです。
駐在員A
駐在員B
海外オフィスに来ても、日本と同じ働き方をしている場合、これは大変危険であると考えています。
なぜならば、これは単に「働く座標が変わっているだけ」だからです。
先ず、グローバル展開を行う上でHQは各国にブランチを設けますが、それはその国に最適化された営業活動を行うためです。
当たり前ですが、国や業種によって商習慣は異なります。
例えば、ある程度お酒の付き合いが営業上必要だったり、とにかく競争的価格が求められることだったり、様々なケースがあります。
そして、HQにとって「最も理想的な状態」とは何でしょうか?
あくまで筆者の意見ですが、これは「HQが何も言わなくてもローカルだけで勝手に売り上がる状態」に他なりません。
特段プッシュしなくてもローカルが自分で判断して勝手に利益を上げてくれるならば、これほど本社にとって楽なことはないですし、現地が現地のやり方で結果を出している場合、本社からの過剰なマイクロマネジメントはむしろ邪魔になるでしょう。
HQ担当者・駐在員の意義
極論するならば、理想的には「駐在員」は必要ないのです。
駐在はあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。
現地の事情は現地の人間が一番良く知っているのだから、現地の人間がマネジメントを行い、現地のスタッフが現地の商習慣に基づいて適切な営業活動を行い、売上を継続的に上げていればそれで良いのです。
海外営業や駐在員は、その状態(=現地主導の体制)を長期的に築くこと・現地を啓蒙し、モチベートすることがHQ側の仕事であり、現地法人は日本人のポジションを用意するための「器」ではありません。
駐在員は現地の雇用を1つ潰してビザが発行されているわけですから、自分が本社の人間として知識をブラックボックスにして組織としての形式知化を怠っているのならば、その人間に駐在員として価値はないでしょう。
現地スタッフ
こういった妥協の関係性が出来上がってしまうことが一番悪しき状態です。
HQの人間とローカルの人間が志を同じくしていない状態においては、特段ミッションのない(現地でなければならない仕事ではない)ルーティン駐在員が出来上がるのです。
これを防ぐためには、以下のような人事施策が必要になるでしょう。
- 適切な能力を持った人間を適切なポジションに配置する(適材適所)
- 能力開発の機会を設けること
- 成果をあげた人間の賃金や報酬などのインセンティブを設計すること
- 情報をオープンにし、公平公正な評価制度を確立すること
もしもあなたの会社が古典的な日系企業で年功序列的な風土であったとしても、海外の子会社のスタッフが一番モチベーションを高く維持し、自主性を持って業務に邁進できる仕掛け作りは必要不可欠です。
駐在員を含むHQの人間はこういった環境整備も最重要の仕事の1つと言えるでしょう。
本社とのパイプを持つ自分にしかできない業務と捉え、組織をローカライズして変革してみてはいかがでしょうか?
海外現地法人マネジメント(人間関係構築)にも使えるマーケティング心理
さて、ここでは海外のスタッフと共同してビジネスを推進していくためにどういった働きかけをすれば良いか、筆者が実践していたことをいくつかご紹介したいと思います。
余程の大企業の注力市場でもない限り、海外現地法人は中小企業です。
中小企業は、そもそもあらゆるリソースが不足しています。
対して本社から指示出しをする人間は、大企業の恵まれた環境にいる(自分の仕事だけに集中できる)ことが多いです。
この立場の違いで、本社から一方的にこうしろ、ああしろなどと言って、現地の人が動くでしょうか?
渋々やるのかもしれませんが、気持ちよく動いてはくれないでしょうから、そこから生まれるアウトプットもたかが知れています。
また、これは筆者の意見ですが、広義な意味で捉えれば現地法人も「一種の顧客」です。
独立採算をしている企業体ですし、現地の需要予測を行い、納期調整等鑑みながら本社から仕入れております。
先ずもって本社よりも自身の利益のために営業・マーケティング活動を行っています。
マーケティングの仕事の1つは「消費者の行動変容」を起こすことであり、これを組織内の仕事にも適用してみましょう。
相手の立場を鑑みて、何をすれば相手がそのように行動してくれるのか?を必死で考えましょう。
良好なパートナシップを築き、共創する姿勢がなければ海外のビジネスにおける成功の可能性は極めて低くなってしまうでしょう。
ひろ
明日から使えるものもあると思いますので、是非ご参考にして頂ければ幸いです。
単純接触効果(ザイオンスの法則)
これは名前の通り、相手と会う回数・頻度を上げることで、相手から好意を持ってもらいやすくなるという心理現象です。
営業マンが客先に定期的に足を運び、顔を覚えてもらう、得意先から気に入ってもらうなどが単純接触効果に該当します。
グループ内同士でも、人間なので日頃よく連絡してきてくれる相手には親近感を覚えます。
定期的に訪問することができれば一番良いとは思いますが、離れていても日頃から有益な情報を共有してくれたり、ふとした時にメッセージをくれたりなど。
また、現代を生きる我々にはもう1つ大きな武器があります。
それはSNSです。
例えば担当エリアが欧米市場の場合、これは筆者の経験則ですが、スタッフは殆どの確率でLinkedinのアカウントを持っています。※詳細は、下記の関連記事参照。
【Linkedinとは?】転職活動に一歩差をつけるWeb上の履歴書!キャリアSNSのLinkedinを始めよう。これはfacebookなどのプライベートSNSと違い、自分のビジネスキャリアをオンラインで公開し、それにSNSの交流機能が付帯しているといったイメージです。
よってオンラインで繋がる心理上の負担が殆どないため、筆者は新しいスタッフに会った場合、Linkedinで検索して(もしいれば)リクエストを送るようにしています。
何か業界ニュースの投稿をシェアしていたり、勤続何周年のポストが出ていたりすれば、すかさず「いいね」をしてみてはいかがでしょうか?これも相手の投稿を見ていますよという単純接触効果です。
また上記で少し触れましたが、海外出張中や駐在中に、ローカルのスタッフとランチを食べに行くなども単純接触効果です。
接点は意識的に増やすことができますので、臆さず連絡してみましょう!
単純接触効果(たんじゅんせっしょくこうか、英: mere exposure effect)は、(閾下であっても)繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文 Zajonc (1968) にまとめ、知られるようになった。 ザイアンスの単純接触効果、ザイアンスの法則とも呼ばれる。対人関係については熟知性の原則と呼ばれる。
出所:Wikipedia
類似性の法則
人は自分と共通点を多く持った人に好感を持ちやすいですよね。
筆者が海外のスタッフとのコミュニケーションにおいて意識していたことは、大きく分けて以下の2つです。
言葉
筆者は海外のスタッフとは日頃は英語でコミュニケーションしていますが、基本的に担当になった国に関してはその国の基本的な挨拶などは勉強するようにしています。
留学生や日本で働いてる海外国籍の方が、日本語で一生懸命話してくれたら嬉しいですよね。
その逆も然りです。
ちなみに筆者は初級者ですが、ハングルは読めますし、中国語もHSKの初級は取得しました。
妻もこちらでは簡単なマレー語やマレーシア英語のアクセントを意図的に使っており、意識的に相手の懐に入ろうという配慮を感じます。
文化
現地の文化を積極的に学びましょう。
例えば、筆者は現地のオフィスに行った時に駐在員達御用達のようなお店ではなく、いつも行っているような大衆的な食堂などに連れて行って欲しいと言っています。
現地のリアルな食文化を通じて、相手とコミュニケーションしたいのです。
ハロー効果
ハロー効果をうまく利用して、現地ローカルスタッフの信頼を勝ち取りましょう。
ハロー効果(ハローは「後光」の意味)とは、例えばある有名ブランドが、これまで市場において認知度を勝ち取ってきた製品とは違う領域で新製品を発表したとしても、消費者の間で「このブランドが出すのだから、間違いなく高品質だろう。」と実際に試してもないのにバイアスがかかる効果です。
これは人事においても言うことができ、例えばある領域でトップクラスの実力を誇っている社員の能力(日系企業であれば英語やエンジニアリングなど)をベースに、この人材であれば間違いなく良い仕事をしてくれると評価され、大きなプロジェクトに抜擢されたりするケースが該当します。
若手における海外駐在などは、多くのところこれに該当すると考えています。
大企業の場合、資本力からレバレッジが働き、実力以上のポジションにも抜擢される可能性があるのは嬉しい誤算です。
先ずは何か1つでも部署でトップ(もしくはトップクラス)の実力があるスキルを身に着け、この件はあの人に任せておけば安心というポジションを確立させましょう!
しかし、ハロー効果は”諸刃の剣”です。
それをうまく使えなければ、逆に信用を失ってしまうこともありますので、得たチャンスには応えるように努力をすることが大切です。
ハロー効果(ハローこうか、英語: halo effect)とは社会心理学の用語で、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。光背効果、ハローエラーともいう。例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。ハロー効果は、良い印象から肯定的な方向にも、悪い印象から否定的な方向にも働く。
出所:Wikipedia
返報性の原理
これは、要は「人から何かをしてもらったら、そのお返しをしなくては申し訳がない」と思う心理現象です。
多くの人は、やはり相手から何かをしてもらったときは、(応じるか否かはともかく)きちんと真摯に対応しなくては!と感じると思います。
バレンタインデーのお返しのホワイトデーがまさにその代表例ですね。
これは会社内の相手においても同様で、相手に何かをしてほしいのであれば、先ずは自分が先回りしてその状態を整えることが重要であると考えています。
といった声を良く聞くのですが、ではそのために必要な情報を徹底的にシェアしているのでしょうか?
本社の人間が現法スタッフより情報を持っているのは当たり前であり、言うなれば、現法スタッフが情報収集をし、営業活動を自立して行うだけのスキルを落とし込めておらず、権限委譲をすることができていない本社の責任に他なりません。
1つ筆者の印象的なエピソードを紹介いたします。
私の元上司は、社内で伝説の営業マンと呼ばれる方だったのですが、国内営業時代、営業成績がずっと1位だったとのこと(しかも2位と桁2つ違ったとか…)。
その上司から教えてもらった言葉が今でも脳裏に焼き付いています。
シンプルなようで凄みを帯びたその言葉が、私のビジネス観の原点になっています。
私も部下の立場で感じたのは、相手への「徹底的なGiveの精神」。
相手目線に立って、自分がその立場だったら欲しい情報やサポートはなんだろうか?どうしたら楽に営業ができるのか?と徹底的に考え尽くすことです。
一緒に仕事をしていて、同じチームながら、この方はビジネスにおいて心の底から信頼できる、この人となら自分も夢が見られるという熱い思いに駆られました。
営業資料やホワイトペーパーの完備、サービスのための教育サポートなど、相手のためにできることはたくさんあります。
と思ってもらえるような信頼関係を確立することが、何よりも重要です。
カクテルパーティー効果
「多くの情報の中から自分に都合のいい、自分に関係する部分だけ聞き取る」脳の働きを「カクテルパーティ効果」と言います。
視覚においても同様で、以下の動画が面白いテストでしたので是非ご覧ください。
要するに「人は自分に関係することだけで頭がいっぱい」なのです。
例えば、営業マンは自分の売上がインセンティブに直結しますので、自分の売上を最大化する商品などの情報に注目します。
売れる商品や売りやすい商品の説明や情報に集中しているのです。
本社からあれをやれこれをやれといくら言ったところで、当人達の中で具体的なインセンティブがないものについては話半分以下くらいにしか聞いていないでしょう。
相手の立場を考えて、何をしたらそれを実現するために喜んで動いてくれるか?を考えなければ人は主体的には動きません。
リンゲルマン効果
これは「社会的手抜き」と呼ばれる現象です。
ドイツのリンゲルマンが検証した効果で、綱引きにおいて1人だけで綱を引いた時の力を100%とすると、2人で引っ張ると1人当たりの力が93%、5人では70%、8人では半分の力になってしまうことが確認されたようです。
リンゲルマン効果とは、集団で作業する際に一人あたりの生産性が低下する心理現象です。「社会的手抜き」ともいわれており、従業員が多い日本企業を中心に生産性向上の阻害要因と指摘されています。
出所:BIZHINT
よく会議は7人以下で実践すべし!というビジネスハックが見られますが、これもリンゲルマン効果に基づいているものであると推察されます。
日本の大企業でよく見られるような大人数の会議が非常に生産性が低いのはここにあり、一人一人の貢献度は極めて低いのです。
体だけ会議に出ていて内職している人がたくさんいますよね(笑)
プロジェクトは、必要な最低限度の人数で一人一人が当事者意識を持って取り組まねば効果が低いのです。
指示出しをなぁなぁにするのではなく、誰がいつまでに何を(それをどのようにチェックするかも)?を明確にし、構成員が自分は確実にこのプロジェクトを担っているという責任感とモチベーションを担保しましょう。
選択のパラドクス(ジャムの法則・松竹梅理論)
聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、有名なジャムの実験があります。
コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授による実験で、スーパーにおいて6種類のジャムの試食のテーブルと、24種類のジャムの試食のテーブルの試食率と購入率を検証したものです。
結果は、試食率という観点で見ると、24種類のジャムのテーブルのほうが高かったのですが、購入率というコンバージョンでは、6種類のジャムのテーブルのほうが高かったのです。
例えば、①すべてのケーキがバランス良く美味しいお店と、②行列のできる絶品チーズケーキのお店、だったら後者に行ってみたいと思いませんか?
私たちは無意識に選択肢が多すぎると脳が疲れてしまうため忌避しており、脳のキャパシティの範囲内で意思決定をしたいと思っているのです。
これを理論を応用して大成功したのが、アマゾンです。
なんでも揃っているという安心感からそのサイトを利用する人もかなり多いのではないかと?と思いますが、個人的にアマゾンを最強たらしめているのは「リコメンド機能」と「レビュー機能」です。
ジャンルごとの数多い選択肢の中から、ユーザーの嗜好や今までの購入履歴などを分析してオススメ商品を表示してくれたり、例えばユーザー評価が星4つ以上の商品を表示するなど、かなりスクリーニングして消費者の意思決定の負担を減らしてくれるため、購入のコンバージョンが高いのだと考えられます。
日本ですと、サービスパッケージなどは松竹梅の3つから選ぶことが多いですよね。
このように相手へ何かを提案する場合などは、情報の海の中から相手に丸投げするのではなく、相手が意思決定しやすいように情報をまとめておくことが極めて重要になります。
自分が提案される側だったら、こんな面倒くさい案内だったら嫌だな…など、簡潔でわかりやすいプレゼンテーションを心がけてみましょう。
共創するパートナーシップを実践し、世界的なビジネスを推進する仕組みづくりを目指していきましょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!